Research | 加工機の制御と知能化

加工中に抽出・推定したデータから加工機自身が加工プロセスの状態を自律的に監視・判断・制御する,知能化技術を開発しています.特に“力を感じる”加工機の特性を生かした知能化技術の開発に力を入れています.

加工機の制御と知能化
工作機械分野では,センサ情報に基づき機械自身が加工プロセスを自律的に監視・判断・制御する知能化技術の開発に目が向けられ,次世代型知能化工作機械によるスマート生産システムの実現に向けて世界的に競争が激化しています.本研究室では,工作機械の安心・安全性,ユーザビリティを高めるため,サスティナブルで汎用性の高いセンサレスな知能化技術と,ハイエンドなセンサベースの知能化技術の開発に取り組んでいます.

Research Theme

Intelligent Machine

揺動運動を援用したパラレルターニングによるびびり振動回避

揺動運動を援用したパラレルターニングによるびびり振動回避

近年,複雑形状部品加工の高能率・高精度化の要求に伴い,多軸・複合加工機による複数工具同時加工が注目されています.パラレルターニングはその一種であり,適切な加工条件を選定できれば材料除去率の向上が期待できます.一方で,単一工具による旋削加工と比較して,加工プロセスの安定性が低下し,びびり振動と呼ばれる不安定振動が生じやすい点に課題を残します.本研究では,センサレス切削力推定技術を応用した搖動加工法の導入により,実加工中にびびり振動を回避する安定化技術の開発に取り組んでいます.加工中にびびり振動の状態が変化する場合においても,提案技術を導入することでリアルタイムにびびり振動を回避できます.

 
 
 

新構造材料を用いた軽量化工作機械ステージ制御技術の開発

新構造材料を用いた軽量化工作機械ステージ制御技術の開発

送り駆動系のさらなる高速化や省エネルギー化に向け, 構造材料に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のような新構造材料を適用した,軽量化工作機械に期待が寄せられています.一方で,軽量化に伴い,加工力などの外乱に対する位置決め精度の悪化や,繊維素材であるCFRPの持つ強度異方性による安定性の低下が懸念されています.本研究では,軽量化工作機械の制御手法の確立に向け,従来の回転ステージと試作したCFRP回転ステージの制御特性を理論的・実験的に評価することでCFRPステージに適した制御手法の開発に取り組んでいます.

 
 
 

センサレス工作物認証と機械学習を用いた最適加工条件導出手法の開発

センサレス工作物認証と機械学習を用いた最適加工条件導出手法の開発

加工条件は,切削温度や切削抵抗,工具摩耗の進行,びびり振動の発生に対して大きく影響を与えますが,その決定は作業者の知識と経験に依存しているのが現状であり,工作機械が加工条件を自律的に導出するシステムの開発が強く求められています.本研究では,機上で押し込みを行った際のスラスト力と弾性・塑性変形量から材料特性を計測する手法を提案するともに,得られた材料特性と工具の刃長と工具径から機械学習により自律的に加工条件を決定する手法を提案しています.これまでに,超精密加工機において,工作物のヤング率と硬度に基づき,適切な切削速度を導出するシステムの構築に成功しています.

 
 
 

センサレス切削力推定技術の開発とその応用

センサレス切削力推定技術の開発とその応用

切削力はあらゆる工具異常と結びついており,切削力を知ることは加工状態を把握する上で非常に有益といえます.一方で,力センサ等の外部センサの導入は,維持管理コストや故障率の増大を伴う上,加工空間内に設置できない場合も多くあります.また,実用的には生産現場で稼働中の工作機械にアドオンとして状態監視機能を付与することが望まれます.本研究では,外部センサの代用になり得る基盤技術として,工作機械の内部センサのみを利用した高精度かつ広帯域なセンサレス切削力推定技術を開発しています.また,推定切削力に基づく異常加工監視・回避技術の開発を通じ,次世代知能化工作機械に貢献する新たなソリューションを提案しています.

 
 
 

非定型研磨作業を可能にするロボット研磨システム

大型複雑形状の金型研磨や航空機部品の補修研磨は形が定まらない非定型作業のため,自動化が進んでおらず人間の作業に依存しています.本研究室では,ロボット研磨の自動化を目指し,①センサレス加工力制御技術や②モード空間上で機能分離して研磨力と工具姿勢を同時に制御することで熟練研磨技術を再現する技術を開発してきました.これらの技術シーズを統合・拡張し,既存のロボット技術と融合して,非定型作業である研磨工程の自動化を可能にするロボット研磨システムの開発に成功しました.既存の産業用ロボットをベースにおき,非定型研磨の自動化に必要な機能モジュールを段階的に付与することで,拡張性や汎用性を高める工夫をしている点に特徴があります.(この研究は,競輪の補助を受けて実施しました)