Research | 加工現象解析とプロセス開発

最新の分析装置・観察装置を用いて超精密加工プロセスや金属3Dプリンティングにおける加工現象の解析を行っています.プロセスの最適化やハイブリッドプロセスの開発研究にも取り組んでいます.
加工現象解析とプロセス開発

要素技術の発展に伴い,工作機械はナノスケールの機械加工が実現できるまでに発展しました.柿沼研では,光学材料を対象とし,極限の除去加工である超精密加工における加工現象解明や加工プロセス制御に取り組んでいます.また,近年注目を集めている金属3Dプリンタにおける加工現象解明やプロセスデザインの研究にも力を入れています.

Research Theme

Nano / Micro hybrid process

BK7ガラスの高能率高精度な超精密研削加工法開発

BK7ガラスの高能率高精度な超精密研削加工法開発

スマートフォンなどに用いられる小径のレンズは成形加工により大量生産が可能です.しかし,一眼レフやプロ用カメラに用いられる大口径ガラスレンズは,成形加工が困難で,直接加工(研削+研磨)による生産手法が用いられます.しかし,レンズの直接加工は生産効率が低く,製造に長時間を要するといった問題があります.

そのため,高能率化を目的として,砥石送りと被削材周速を同時制御する加工プロセス技術の開発や砥石材質に着目したプロセス解析の研究を行っています.

また,サーボ制御を応用したクラック抑制技術など,新たなプロセス制御技術の開発にも取り組んでいます.


高性能微小光共振器開発のための単結晶蛍石加工法開発

高性能微小光共振器開発のための単結晶蛍石加工法開発

従来の電子信号を用いて行ってきた信号処理を光で代替する光信号処理技術が注目を集めています.この光信号処理回路の構成要素の一つとして小さな空間に光を閉じ込める機能を持つ素子である微小光共振器が挙げられ,その材料として単結晶蛍石を用いるのが理想的とされています.しかし蛍石は硬脆材料であることに加え,強い結晶異方性を有することから,一般的に超精密切削加工により形状を創出した後,研磨加工を施すことで最終仕上げを行っています.

従来,この研磨工程は手作業によって行われているため形状にだれが生じやすく,形状精度が悪化する点に課題があります.

そのため,本研究では超精密切削加工の加工メカニズム解析や,手作業に代わる高精度な研磨手法の開発に取り組み,高性能な微小光共振器の製造を目指しています.

Additive Manufacturing

金属溶融状態安定化のための熱伝導逆解析モデルに基づくレーザ出力最適化

金属溶融状態安定化のための熱伝導逆解析モデルに基づくレーザ出力最適化

金属3Dプリンティングの造形精度を向上させるためには,金属の溶融点近傍の高温状態を安定して維持する必要があり,造形点の熱伝導条件によって加熱不足や過加熱は容易に生じてしまいます.特に高出力レーザを用いた場合メルトプールも大きくなり,安定化はより困難となります.

本研究は,指向性エネルギー堆積法における造形点温度を一定に保つレーザ出力の導出方法を提案しています.具体的には,レーザ出力に対する造形物内の温度分布を解析する熱伝導シミュレータを作成し,造形点温度を評価変数とした最急降下法によりレーザ指令値を最適化します.導出したレーザ指令値によって過加熱による造形精度低下を抑制に成功し,提案手法の有用性が示されました.


指向性エネルギー堆積法における造形物内残留空孔の抑制

指向性エネルギー堆積法における造形物内残留空孔の生成制御

金属3Dプリンティング技術の重大な課題として,造形物の高密度化が挙げられます.造形物内部に残ってしまう空孔は亀裂が生じる原因となり,強度や信頼性に著しい悪影響を与えます.造形物内部の空孔率を抑制する造形法は指向性エネルギ堆積法を実用的な加工プロセスにする重要な基盤技術といえます.

そこで本研究は空孔発生メカニズムの解明を目指し,金属組織観察や空孔の偏在性評価を行い,高密度造形が可能となる積層条件を理論的に明らかにすることを試みてます.高密度溶融造形法の確立を目指し,高出力レーザによる再溶融処理法など,新たな技術の開発も積極的に行っています.


指向性エネルギー堆積法による異種金属材料の傾斜積層造形

指向性エネルギー堆積法による異種金属材料の傾斜積層造形

機械特性の異なる材料を適材適所に使い分ける設計は,製品の軽量化・高機能化・低コスト化につながります.しかし異種材料を構造的に接続するためには,ネジやリベットなどの部品点数増加や組立・溶接などの工程増加といった問題が生じる.これに対して3Dプリンタは造形途中に材料を変更する一体造形が可能であり,大幅な工程集約を期待できます.

本研究は指向性エネルギー堆積法による異種金属材料の一体成形の実用化に向け,造形条件が接合部の強度や金属組織成長に与える影響を詳細に評価します.また,造形位置ごとに積層材料の混合比を制御することで,接合境界がなく機械特性が緩やかに変化する傾斜機能合金の造形へと応用の幅を広げています.